日本ならではの敷物「畳」が貴族階級から庶民へと普及するまで。
中国伝来のものが多い中で、畳は日本固有の敷物。
その歴史は「管畳八重」「皮畳八重」などお記述がある古事記にまでさかのぼります。
まだ畳床などはなく、コモなどの敷物を重ねたものと推測されます。
現在の畳に似た構造になったのは平安時代。
板敷に座具や寝具として置くという使い方で、使う人の身分によって畳の厚さやへりの柄、色が異なりました。
鎌倉時代から室町時代にかけ、書院造が生まれて、部屋全体に敷き詰める使い方に発展しました。
それまでは高貴な人や客人のもてなしのためのものでしたが、建物の床材として利用されるようになったのです。
しかしそうした使い方尾貴族や武士の富の象徴。
桃山時代さらに江戸時代に至る中で、数寄屋造や茶道が発展して普及し、徐々に町民の家にも畳が敷かれるようになりました。
それでも身分による畳の制限の風習は残り、庶民が使用できるようになったのは江戸時代中期以降。
畳師・畳屋と呼ばれる人々が活躍し、畳干しする家々の光景があちこちで見られるようになりました。
畳の豆知識
豊かな自然とともに受け継がれる伝統の技術が、私たちの生活に畳の心地よさを彩を与え続けて。
畳表に使用されるイグサは4000本以上。
さまざまな工程に「快適」を生み出す工夫があります。
畳表の材料のイグサは多年生の植物。
熊本・広島・岡山・福岡・高知などを中心に栽培されています。
イグサの苗の手植えは真冬にスタート。
春、新芽の発育を促すためにイグサを45cmほどの長さに切り揃える先刈りという作業を経て、夏、1.5mほどになったものを刈り取ります。
畳表の製作工程でははじめに欠かせないのが泥染め。これはイグサの独特の色・ツヤ、そして香りを引き出すために行われます。
そして織機で畳表に編んでいく作業。
畳一帖分い使用されるイグサは約4000~5000本、高級なものになると7000本ものイグサが使われます。
経糸は主に麻糸と綿糸で、高級品にはマニラ麻糸が使われます。
畳一帖分、2m8cmの長さの糸が136本も使われ、1時間弱で編み上げられます。
吸放湿性、断熱性、弾力性の高い、丈夫な畳床に進化して。
ふだん私たちの目に触れませんが、畳の重要な機能を担っているのが畳床。
従来の畳床は稲ワラを5cmまで圧縮してつくっていましたが、最近はコンクリート造など断熱性・気密性の高い住まいに合わせて新しい素材の畳床がどんどん登場しています。
高温多湿の風土のおとで密閉構造の住まいには断熱性や耐湿性の高い素材が求められます。
現在、畳床の種類は大きく分けて3つあります。
主に使われるのは断熱性と耐湿性に優れたポリスチレンフォームやインシュレートボード。軽量で防カビ・防虫の工夫が施され、自由設計にも対応できるというメリットもあります。
これらの素材の特徴を十分に生かした脱ワラタイプをはじめ、新素材と稲ワラの両方の長所を生かしたサンドウィッチタイプなどさまざまな畳床がJISに基づいた品質基準のもとで生産されています。
畳の製作工程
表張付かまち縫機
畳は職人による部屋の採寸が決め手。そして寸法通りに畳床を裁断します。
近年は0.1mm単位の制度を誇るコンピュータ制御で行っています。
- 古い床に、新しい畳表をつけるために、表の端を機械にセットしています。
- セットされた表を固定しています。
- 古い床に新しい表を縫いつけています。
全自動両平刺機
畳表を畳み床のサイズに合わせて裁断し縫い付けます。
- きれいな表が張れました。さあ、両端に畳縁をつける段取りをしましょう。
- 只今、新しい縁を縫いつけ中。元の畳の大きさ通りに、畳表を切りながら、縁を縫いつける大変優れもの。
- 新しい縁がつきました。
全自動両返縫機
畳へりを縫い、返して畳のすみを止めます。さらに返した部分を縫い付けて仕上がりとなります。
- 折り曲げられた畳縁を、下から縫い付けているところです。
- さあ もうすぐ完成です。